三井記念美術館「高麗茶碗」

http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html 三井記念美術館で開催中の特別展、高麗茶碗。 これでもかというくらい高麗茶碗を堪能してきました。 楽焼の茶碗がどっしりとした重さを感じるのと対照的に、「軽み」のある高麗茶碗は気軽なイメージがあ…

中澤渉「日本の公教育」(中公新書)

教育の無償化という議論があると必ず出てくる意見として、教育の恩恵をうけるのは自分自身なのだから自分で金を出すべきであり、他人の金(国家)をあてにすべきでない、というものだろう。 しかし、本書では歴史的な議論の流れを丁寧に追い、教育を受けられ…

横山雅彦「高校生のための論理思考トレーニング」

会社に横山雅彦の「高校生のための論理思考トレーニング」があり、著者の懐かしさに手に取った。高校生の時は分かったような分からないような、結局分からなかった著者のいう「論理思考」がようやく腹に落ちるようになってきた。 結局、論理思考は技術のよう…

山田 真哉「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?~身近な疑問からはじめる会計学~ (光文社新書)」

一昔前に話題になった本書。たまたま手に取って見たら非常に面白かった。 企業活動に関わるお金なんて全く知らなかったけれど、なんとなくこういうものがあるんだと分かった。 会計学についての入門書としてはとても良い。 以下、気になったところから。 ハ…

【映画】レオン

家族を惨殺された少女が、隣人の殺し屋に助けを求める。一緒に生活していく中で「愛情」が芽生えていく。そして、家族(弟)を殺した仇を討つために動き出す。 ある意味ありきたりで良くあるストーリーで、展開が読めるので安心して見ていられる。 人が殺さ…

【映画】万引き家族

万引き家族、ようやく見た。 リアルなんだけど、おれの知っている社会では全くリアルではなく、別の時間軸で進んでいるストーリーのよう。 舞台が日本というだけで。 これが現実だという環境が日本にあり、社会の課題だからこんなに話題になったのだとしたら…

山口 周「外資系コンサルの知的生産術~プロだけが知る「99の心得」~ (光文社新書) 」

第一章 知的生産の「戦略」ハイライト(イエロー) - 位置153一般に差別化というと 「競合との差別化 」が意識されがちですが 、知的生産においては 「顧客がすでに持っている知識との差別化 」が一番大きな問題になります 。ハイライト(イエロー) - 位置199特…

森見登美彦「熱帯」

その分厚さ故に買ってから1ヶ月ほど読もう読もうと思いつつも躊躇していた森見登美彦「熱帯」をようやく読んだ。 森見登美彦、こんな感じになったか、という感想。もともと四畳半神話大系とかでも不思議な世界観を披露してきたが、(そこから作品がアップデ…

七月大歌舞伎

昼の部を観劇。 市川右團次の「高時」、錦之助と獅童の「西郷と豚姫」、海老蔵の「素襖落」、海老蔵と堀越勸玄の「外郎売」の四幕。 見所はもちろん、外郎売の堀越勸玄くん。 成田屋の芸である外郎売の早口をしっかりと勤めていた。 右團次の高時は歌舞伎ら…

上西充子「呪いの言葉の解きかた」

呪いの言葉とは人を不幸にするために唱えられる呪文のことではない。 そこに人を縛り付け,思考を停止させる言葉のことである。 本書は社会にあふれるそういった言葉を取り上げつつ,それらがいかにナンセンスで意味のないものであるかを指摘していく。 我々…

原武史「「昭和天皇実録」を読む」

昭和天皇実録は20巻もあり,実際にそれをすべてを読むというのは,一般の読者にとっては非常に難しい。 このような形で,天皇制の専門家による解説書が非常にありがたい。 著者の原武史は一貫して昭和天皇に戦争終結を遅らせた責任があるとする。 これは本書…

鈴本演芸場「蔵出し喬太郎作品集〜引き出しの奥のネタ帳〜」

喬太郎が鈴本でトリというので久しぶりに寄席に行ってきた。 過去に演じて、お蔵入りしたネタを改めて高座にかけるというのがテーマ。 さすが喬太郎という感じで、死ぬほど笑わせてくれた。 いきなりの空気の掴み方が凄い。 途中、他の噺家のネタを少し見せ…

映画「たそがれ清兵衛」

Amazonプライムで「たそがれ清兵衛」を観た。 映像の自然さがとても印象的だった。無理に作られた時代劇ではなく、ごく自然に街があり、家があり、人がいる、という感じ。 時折映る山々や川などの本当の自然の風景とも重なり、安心感を覚えた。 田中泯の最後…

映画「極大射程」

同じタイトルの小説が原作となっているが、原作より、ストーリーがシンプルになった分、わかりやすくなっている。 https://www.amazon.co.jp/%E6%A5%B5%E5%A4%A7%E5%B0%84%E7%A8%8B%E3%80%88%E4%B8%8A%E5%B7%BB%E3%80%89-%E6%96%B0%E6%BD%AE%E6%96%87%E5%BA%…

映画「最後の忠臣蔵」

Amazonプライム・ビデオで鑑賞。 吉良邸討ち入りから16年。討ち入りの直前に姿を消した瀬尾孫左衛門は、大石内蔵助からの密命をおびて、京都で彼の隠し子を育てていた。 あとから調べたところ、瀬尾孫左衛門とは実在の人物で、実際になんらかの理由でいなく…

歌舞伎『月光露針路日本 風雲児たち』

三谷歌舞伎『月光露針路日本 風雲児たち』を観た。 これは三谷幸喜作・演出による、みなもと太郎の人気歴史漫画『風雲児たち』を原作としたもの。 大黒屋光太夫一行の遭難から始まり、仲間の死を経ながら、日本への帰国を目指してロシアを旅していく。そして…

八木澤高明「江戸・東京 色街入門」

タイトルに「入門」とあるように、東京都内の色街について、歴史的背景と現状についてまとめたもの。 色街歩きに興味がある読者が、本書を頼りに実際に外に出ていくのを想定しているようなつくり。 ただ、入門書だからか、もう一歩踏み込んで欲しいというと…

司馬遼太郎「韃靼疾風録」

今まで読んできた司馬遼太郎の小説と比べると何か違和感がある気がしながら読んだ。 勉強不足だったが、「韃靼疾風録」を読んでいる途中で、本作が司馬遼太郎の小説としては最後の作品だと知った。その後は「街道をゆく」などの紀行文やエッセイが中心となり…

内田樹「街場の読書論」

内田樹さんの文章は読みやすい。 そして分かった気になる。 自分たちの周りの問題を、彼の文章を、通して理解した気にしてくれる。 しかし、それを自分で他人に説明しようとしても全然できず、またできたとしても自分の言葉にならず、結局、理解できていない…

原武史「天皇は宗教とどう向き合ってきたか」

原武史「天皇は宗教とどう向き合ってきたか」を読んだ。とても面白く、名の通り天皇と宗教との関わりで知ることが多くあった。宗教とは直接関係がないが、戦後の昭和天皇のカリスマ性が残った理由としてマッカーサーが東京に引きこもっていたせい、という指…

村上春樹「猫を棄てるー父親について語るときに僕の語ること」と彼の訳した「心臓を貫かれて」について

先週の金曜日、村上春樹が訳した「心臓を貫かれて」が読み終わった翌日に「文藝春秋」で彼が今まで語らなかった父親についての文章が載ったことを、朝日新聞の朝刊で知った。 それぞれを読んでみて、「心臓を貫かれて」の村上春樹版だと強く感じた。 「心臓…

村上春樹訳「心臓を貫かれて」

この本との出会いは、河合隼雄・村上春樹「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」の中で「殺すことによって癒される人」は実際に存在しているのだとして、村上がいま訳している本書を紹介している箇所を読んだことによる。 何を言っているのか分からず、気になり…

ミュージカル「レ・ミゼラブル」

帝国劇場で、レミゼラブルを観劇。 5回目くらいだろうか。 はじめてファンテーヌの死ぬシーンで号泣してしまった。子どもを持つと親の気持ちで観るせいか。 幕開けと同時にその音楽で舞台に引き込まれ、気持ちの良い緊張感が包まれる。 感動する場面が見るた…

六古窯 ―〈和〉のやきもの

出光美術館でやっている展覧会「六古窯 ―〈和〉のやきもの」へ。 壺をこれでもかというほど眺めてきました。 茶道具とは異なるダイナミックさを見つけることができ満足です。 意外に壺ってずんぐりむっくりした姿がかわいいものだと再発見。 「美術品」とし…

原武史「平成の終焉」

非常に刺激的。 退位が近づくにつれ、ほぼ100%に近い今上天皇と皇后への肯定的な世論に対して、批判的な視線をもってロジカルに評していける論者がどれだけいるだろう。 本書が個人的な宮内庁への「反論」という意味があるというのがあとがきに書かれていた…

司馬遼太郎「空海の風景」

司馬遼太郎の「空海の風景」が好きだ。 1200年以上も前の存在であり、史実よりも伝説の方が多いような主人公と時代を相手にしながら、空海についての史料を1つずつ拾い、彼のパーソナリティーのカケラを集めていくという気が遠くなるような思考作業をしてい…