八木澤高明「江戸・東京 色街入門」

タイトルに「入門」とあるように、東京都内の色街について、歴史的背景と現状についてまとめたもの。

色街歩きに興味がある読者が、本書を頼りに実際に外に出ていくのを想定しているようなつくり。

 

ただ、入門書だからか、もう一歩踏み込んで欲しいというところもあり、色街についての表面をサラッと撫でた感じなのがとても残念。なかなかここまで網羅的に都内の色街を扱う一般書は無いだけに。

 

たとえば、非常に興味深く感じた内容として、幕府の非公認の色街「岡場所」で有名だったところがみな有名な寺社の門前であるという指摘。著者は町奉行寺社奉行の管轄の関係で取り締まられなかったと指摘しており、頷けるが、そもそも聖と俗の結びつきは、日本全国、世界中でも同様の例があるので、その辺りの関係性についても踏み込んだ考察をしてほしかった。

 

また、現在の東京の「色街」というと、鶯谷や五反田、蒲田などもでてくるが、いまの「色街」との断続性についても気になるところだった。吉原や池袋、渋谷、錦糸町など現在も続く街以外では、どのような歴史的背景によって「今」が成り立ってきたのか、逆に歴史的背景がないのであればそれはそれはで何故なのか非常に興味深い。

 

最近では、飛田新地など地方の色街を扱う書籍が目立つような気がしているが、古地図で街歩き的なブームにも関係しているのだろうか。

 

アングラな内容でないと売れなくなっているとか?

 

ちなみに著者の八木澤高明さんはウキペディアによると「裏社会や日陰者などを取材対象にする」ということで他にも興味深い著作が多くあった。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/八木澤高明