読書記録

中澤渉「日本の公教育」(中公新書)

教育の無償化という議論があると必ず出てくる意見として、教育の恩恵をうけるのは自分自身なのだから自分で金を出すべきであり、他人の金(国家)をあてにすべきでない、というものだろう。 しかし、本書では歴史的な議論の流れを丁寧に追い、教育を受けられ…

横山雅彦「高校生のための論理思考トレーニング」

会社に横山雅彦の「高校生のための論理思考トレーニング」があり、著者の懐かしさに手に取った。高校生の時は分かったような分からないような、結局分からなかった著者のいう「論理思考」がようやく腹に落ちるようになってきた。 結局、論理思考は技術のよう…

山田 真哉「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?~身近な疑問からはじめる会計学~ (光文社新書)」

一昔前に話題になった本書。たまたま手に取って見たら非常に面白かった。 企業活動に関わるお金なんて全く知らなかったけれど、なんとなくこういうものがあるんだと分かった。 会計学についての入門書としてはとても良い。 以下、気になったところから。 ハ…

森見登美彦「熱帯」

その分厚さ故に買ってから1ヶ月ほど読もう読もうと思いつつも躊躇していた森見登美彦「熱帯」をようやく読んだ。 森見登美彦、こんな感じになったか、という感想。もともと四畳半神話大系とかでも不思議な世界観を披露してきたが、(そこから作品がアップデ…

八木澤高明「江戸・東京 色街入門」

タイトルに「入門」とあるように、東京都内の色街について、歴史的背景と現状についてまとめたもの。 色街歩きに興味がある読者が、本書を頼りに実際に外に出ていくのを想定しているようなつくり。 ただ、入門書だからか、もう一歩踏み込んで欲しいというと…

内田樹「街場の読書論」

内田樹さんの文章は読みやすい。 そして分かった気になる。 自分たちの周りの問題を、彼の文章を、通して理解した気にしてくれる。 しかし、それを自分で他人に説明しようとしても全然できず、またできたとしても自分の言葉にならず、結局、理解できていない…

原武史「天皇は宗教とどう向き合ってきたか」

原武史「天皇は宗教とどう向き合ってきたか」を読んだ。とても面白く、名の通り天皇と宗教との関わりで知ることが多くあった。宗教とは直接関係がないが、戦後の昭和天皇のカリスマ性が残った理由としてマッカーサーが東京に引きこもっていたせい、という指…

村上春樹「猫を棄てるー父親について語るときに僕の語ること」と彼の訳した「心臓を貫かれて」について

先週の金曜日、村上春樹が訳した「心臓を貫かれて」が読み終わった翌日に「文藝春秋」で彼が今まで語らなかった父親についての文章が載ったことを、朝日新聞の朝刊で知った。 それぞれを読んでみて、「心臓を貫かれて」の村上春樹版だと強く感じた。 「心臓…

村上春樹訳「心臓を貫かれて」

この本との出会いは、河合隼雄・村上春樹「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」の中で「殺すことによって癒される人」は実際に存在しているのだとして、村上がいま訳している本書を紹介している箇所を読んだことによる。 何を言っているのか分からず、気になり…

原武史「平成の終焉」

非常に刺激的。 退位が近づくにつれ、ほぼ100%に近い今上天皇と皇后への肯定的な世論に対して、批判的な視線をもってロジカルに評していける論者がどれだけいるだろう。 本書が個人的な宮内庁への「反論」という意味があるというのがあとがきに書かれていた…

司馬遼太郎「空海の風景」

司馬遼太郎の「空海の風景」が好きだ。 1200年以上も前の存在であり、史実よりも伝説の方が多いような主人公と時代を相手にしながら、空海についての史料を1つずつ拾い、彼のパーソナリティーのカケラを集めていくという気が遠くなるような思考作業をしてい…