七月大歌舞伎
昼の部を観劇。
市川右團次の「高時」、錦之助と獅童の「西郷と豚姫」、海老蔵の「素襖落」、海老蔵と堀越勸玄の「外郎売」の四幕。
見所はもちろん、外郎売の堀越勸玄くん。
右團次の高時は歌舞伎らしくて良かった、獅童は客の喜ぶポイントを分かってる感じがさすがだった、梅丸くんは相変わらずめちゃくちゃ可愛いし、児太郎の女型はSっけがあってたまらない、海老蔵も病み上がりなのか力がいい感じに抜けててくどくなかった。
それぞれの演目で役者一人一人に見所があり、良い舞台だった。たぶん、夜の部と比べると地味なのかもしれないけど、古典を見ることもとても大事なこと。
でも、本当に獅童は上手い、古典も新作も。
客が、どうすれば喜ぶのかをちゃんとわかってる。気持ちがよい。
「西郷と豚姫」も「外郎売」でも、児太郎の女型が良かった。キャラか全然違う感じだけど、綺麗過ぎない女性を「女性」として演じている。正直、AVに出て欲しいレベルで色っぽい。これはマジで。
上西充子「呪いの言葉の解きかた」
呪いの言葉とは人を不幸にするために唱えられる呪文のことではない。
そこに人を縛り付け,思考を停止させる言葉のことである。
本書は社会にあふれるそういった言葉を取り上げつつ,それらがいかにナンセンスで意味のないものであるかを指摘していく。
我々の生きる社会ではどれだけそのような呪いの言葉が多く,我々自身がその言葉に縛られているのか。それに気が付くことが,呪いから逃れる第一歩であろう。
呪いの言葉によって思考停止し,一方的な考え方に縛られないにするためにも,自分の感じるおかしいことや違和感というものに向き合いながら,自分の言葉で立ち向かっていくという努力をしていくしかないのではないか。
本書にて初めて知った言葉に「ケアレス・マン」というものがあった。他人のケアに責任を持つことなど想定外であるような労働者のことらしい。ほとんどの企業はケアレス・マンをベースに経営を行っているだろうが,多様性が求められる現代においては逆にケアレス・マンと逆の立場を想定した経営こそが必要になったくるのだろうし,そういう社会であってほしい。
原武史「「昭和天皇実録」を読む」
昭和天皇実録は20巻もあり,実際にそれをすべてを読むというのは,一般の読者にとっては非常に難しい。
このような形で,天皇制の専門家による解説書が非常にありがたい。
著者の原武史は一貫して昭和天皇に戦争終結を遅らせた責任があるとする。
これは本書に限らず,「平成の終焉」でも指摘されていることである。
その責任ゆえに,戦後キリスト教へ接近したり,皇太子(現上皇)の皇后としてカトリックの学校出身の美智子を選んだと指摘している。
また,昭和天皇と皇太后との確執など,意外に一般的な問題も昭和天皇実録では明かされている。
実録をよむことで,昭和天皇という天皇という存在から離れた一人の人間の生きざまが垣間見ることができるようだ。
ただ,実際に実録を読み解くことはなかなかむずかしいが・・・。
映画「たそがれ清兵衛」
Amazonプライムで「たそがれ清兵衛」を観た。
映像の自然さがとても印象的だった。無理に作られた時代劇ではなく、ごく自然に街があり、家があり、人がいる、という感じ。
時折映る山々や川などの本当の自然の風景とも重なり、安心感を覚えた。
田中泯の最後のシーンの動きが凄かった。信じられないくらいしなやかで本当に綺麗に死にゆく姿。死にに行くのに力強く思えるような。
宮沢りえが本当に綺麗。
子育てと仕事と家庭のことなど、いろいろやっている環境からか、清兵衛への共感が強い。
他人はどうみようが、清兵衛は絶対幸せであったと断言できる。
たぶん、これは独身時代に見てたら、分からなかった感情だろう。